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たえちゃん★ひいひい人生★

まいにちを清々しく穏やかにすごしていきたい♪

シリーズ2 短編小説1-7

7話 手術

ベルサイユ宮殿

フレデリックの飲酒がイヤで仕方なくなっていた佳奈は、

ある日、思い切った手段に出た!

 

彼がトイレに立った隙に、瓶に残っていたウォッカを台所の流しに

ドボドボと、捨てたのだ。

 

捨ててしまえば、どの店ももう閉まっているから、諦めるだろう、と佳奈は考えた。

でも、その考えは、甘かった。

 

佳奈は、まだ、アルコール依存症、というのを、良く理解していなかった。

 

トイレから出てきて、ウォッカの瓶が空になっているのをみた彼は激怒した!

そして、思いきり、佳奈を殴った。

 

佳奈は、今まで、誰にも殴られたことなんて、無かった。

だから、初めは、何が起きたのか理解できなかった。

彼の形相は、鬼の様で、飛び上がるほど、怖くなった。

痛みよりも怖さが先にたち、

その場から逃げてベッドにもぐり、

頭からふとんをかぶり、そのふとんをしっかり両手で押さえて、

もう殴られないように自分の身を守った。

必死に怖さに耐えていた。

まんじりともせず、耐えていた。

そのうち、泣きながら、眠ってしまっていた。

 

次の朝起きると、何か目の調子がおかしい。

鏡を見ると明らかに、目が変になっていた。

昨日までの目とは、違うのだ。

自分でも気持ち悪くなった。

 

そこで、寝ているフレデリックをゆすりながら、目がおかしい、と叫んだ。

もそもそしながら、彼は佳奈の目を見て、

驚き、飛び上がり、真っ青になった。

 

その様子をみて、佳奈はなおさら怖くなり、もう自分の人生は終わった、と感じた。

 

フレデリックは、あちこちに電話をかけまくり、それから、

佳奈の手を引いて、病院へ駆けつけた。

 

直ぐに、佳奈は、目の手術を受けた。

レーザー手術だった。

 

大きな真っ白の眼帯が顔半分にまかれた。

「2週間は絶対に包帯を取らないように。取ったら、失明するからね」 といわれた。

 

佳奈は恐ろしかった。本当に怖かった。

そんなこと、今までの人生に一度もなかったことだ。

一度だって、手術なんか、受けたことがない。

半分目が見えないから、まっすぐに歩くこともままならず、フラフラした。

 

フレデリックは、ひたすら佳奈に謝り続けた。

 

アル中の恋人や夫婦のかたわれから、なかなか離れられない、

ということを本で読んで知っていた。

自分もまさに、その一人だと、佳奈は感じていた。

というのは、お酒を飲んでいない時の彼は、別人のように、良い人だった。

誰もが、「楽しくてユーモアもあって、おまけに優しいし、良い人みつけたね、」 というような人だった。

暴力を振るう人も、暴力を振らない時は、人一倍優しい、というのと同じだ。

”今さえ我慢すれば、あとから人が変わったように、数倍も優しくしてくれる” という期待をする。

そして、その優しい時に、暴力をふるったことを謝罪され、もう二度としないから、

という言葉を易々と信じてしまうのだ。 

「そんなドラマ、昔あったな」 と佳奈は、他人事のように思ったりした。

 

フレデリックは、その2週間、まるで別人だった。

お酒は断ち、かいがいしく佳奈の面倒をみて、大切にしてくれた。

食べたいものを告げると、直ぐに買ってきて食べさせてくれた。

 

佳奈は、彼の所為で手術までする羽目になった、と思いつつも、

「私が、彼の大好きなお酒を捨てさえしなければこんなことにはならなかった、

私は、もっと冷静に考えて行動すべきだった」 などと、反省までしていた。

 

そして、このままお酒をたってくれたら、と、期待した。

その2週間は、ゆっくりと、落ち着いた時が流れていった。

佳奈にとって、初めて味わう幸せな日々だった。

 

 

 

 

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